トナーカートリッジとは?特徴やインクカートリッジとの違いを解説
プリンター印刷を行うには、トナーカートリッジかインクカートリッジが必要です。トナーカートリッジかインクカートリッジは、どちらにもそれぞれ利点と欠点があります。本記事では主にトナーカートリッジに焦点を当てて、その特徴やインクカートリッジとの違いを解説します。
トナーカートリッジとは?
トナーカートリッジとは、レーザープリンターなどに装着して使用する粉末状のインクのことです。トナーの粉を静電気により印刷用紙に付着させて、さらにプリンターから発する熱や圧力で定着させて印刷します。定着性が高いため、用紙1枚あたりにかかる印刷時間が短いことが特徴です。また、1枚ごとのインク費用も安いため、ビジネスシーンでよく使われます。
「トナーカートリッジ」と「インクカートリッジ」との違い
トナーカートリッジとインクカートリッジはどちらも印刷用の着色剤ですが、適合機種やインクの性質などに違いがあります。印刷物の品質やコスパを高めるためにも、2つのカートリッジの違いをよく確認しておきましょう。
使用しているインクの種類の違い
トナーカートリッジとインクカートリッジとの大きな違いは、インクの形状です。トナーカートリッジのインクは、マイクロサイズの非常に細かい粉末です。帯電性を持つプラスチックの粒子に、黒鉛や顔料などの着色剤を付着させて作られています。
一方、インクカートリッジのインクは液状です。種類はさらに細かく、染料タイプと顔料タイプの2種類に分けられます。インクに熱や圧力を加えて、ノズルから用紙に吹きかけることで印刷を行います。
使用可能な複合機・コピー機の違い
トナーカートリッジとインクカートリッジとの違いは、使用できる印刷機の種類にもあります。トナーカートリッジは、レーザープリンターやレーザー複合機などで使用します。インクコストが安く大量印刷に向いているため、主に業務用コピー機で使われることが多いです。
対してインクカートリッジは、主に家庭用で使われる印刷機に装着して使用されます。インクジェット式のプリンターや複合機が適合機種で、写真を鮮やかに印刷することなどに向いています。
印刷枚数の違い
トナーカートリッジとインクカートリッジでは、トナーカートリッジのほうがより多くの枚数を印刷できます。カートリッジ1つで印刷できる枚数を比較すると、インクカートリッジは約100枚から600枚なのに対し、トナーカートリッジはその10倍以上の約5,000枚から20,000枚の印刷が可能です。
トナーカートリッジのほうが多くの印刷ができる理由は、インクカートリッジよりも大容量であること、それにより印刷コストが安いことにあります。
印刷単価の違い
印刷物1枚あたりの単価がより安いのは、トナーカートリッジです。A4モノクロ印刷での印刷単価を比べると、インクカートリッジでは1枚およそ12円、トナーカートリッジでは1枚およそ4円かかります。トナーカートリッジなら、インクカートリッジのおよそ1/3のコストでの印刷が可能です。
ただし、より正確な印刷単価は印刷頻度により変わります。あまり印刷機を使わない場合は内部でトナーやインクが固まってしまい、印刷単価がより高くなることもあります。
印刷速度の違い
トナーカートリッジとインクカートリッジとの違いには、印刷にかかるスピードも挙げられます。トナーカートリッジは大量印刷や高速印刷が得意なため、ビジネスシーンで重宝されます。
一方、インクカートリッジは写真や画像などの高品質な印刷を特徴としているため、印刷スピードはどうしても時間がかかります。ただし、インクカートリッジでも顔料インクであれば、ある程度の速度カバーが可能です。顔料インクは、トナーと性質が似ています。文字印刷向きのため、染料インクに比べると印刷速度が速いです。
印刷の色の仕上がりの違い
印刷物の色の鮮やかさや仕上がりのよさでは、インクカートリッジのほうが高品質です。インクカートリッジは仕上がりの希望に合わせて、染料インクと顔料インクの2つを使って印刷を行います。染料インクは、インクが紙に染み込むため繊細で複雑な写真印刷に適しています。顔料インクは、滲まずにくっきりとした線が紙の表面に定着するため文字印刷に適しています。
画像と文書のどちらの印刷にも対応できるインクカートリッジと異なり、トナーカートリッジは繊細で鮮やかな印刷には向いていません。文字印刷は問題なくできますが、色の出方などはインクカートリッジと比べるとどうしても劣ります。
使用可能な用紙の違い
トナーカートリッジとインクカートリッジでは、トナーカートリッジのほうがより多くの種類の用紙が使用できます。インクカートリッジはインクを用紙に吹きかけて印刷するため、用紙を選ばないと色が滲んでしまう恐れがあります。インクカートリッジの高精細な表現を活かすためには、インクジェットプリンタ専用紙を使用しましょう。
一方、トナーカートリッジは定着性が高い印刷方法であるため、あらゆる用紙への印刷が可能です。レーザープリンター専用紙はもちろん、 普通紙や上質紙、再生紙 、OA用紙(PPC用紙、コピー用紙)などの非加工紙から、光沢紙やコート紙などの加工紙まで、用途に合わせて印刷用紙が選べます。
コストの違い
トナーカートリッジとインクカートリッジのコストを比べると、トナーカートリッジは印刷枚数が多いほどコストが低く、反対にインクカートリッジは印刷枚数が少ないほどコストが低いといえます。それぞれのカートリッジについてかかる費用は印刷コストや導入コスト、ランニングコスト、電気代などさまざまな側面から比較可能です。
トナーカートリッジは印刷コストが安い一方、適合機種であるレーザープリンターの導入コスト、ランニングコスト、電気代は高いです。よって多くの枚数を印刷したほうが、よりお得といえます。
対してインクカートリッジは印刷コストが高いですが、適合機種であるレーザープリンターにかかる費用はトナーカートリッジよりも安価です。よってあまり印刷枚数が多くない場合は、インクカートリッジのほうがコストはかかりません。
トナーカートリッジの特徴
トナーカートリッジは、高速印刷や大量印刷に向いています。一般的な普通紙を使っても、文字が滲みません。ここでは、トナーカートリッジの詳しい特徴を解説します。
高速での印刷が可能
トナーカートリッジの際立った特徴の1つは、印刷スピードが速いことです。A4用紙片面印刷でのスピードは、インクカートリッジが1分間に約7枚印刷できるのに対して、トナーカートリッジは1分間で約30枚も印刷できます。インクカートリッジと比べると1分あたり20枚以上多くの枚数を印刷できるほど、トナーカートリッジの印刷スピードは速いです。
大量の印刷に適している
トナーカートリッジは高速印刷が可能なだけでなく、大量印刷も得意です。トナーの粉は用紙への定着が速いため、用紙1枚あたりにかかる印刷時間がインクカートリッジよりも少ないです。
またインクカートリッジに比べてカートリッジに入っている着色剤の量が多く、中には大容量タイプのものもあります。トナーカートリッジは印刷に時間がかからず、1つのカートリッジでより多くの印刷ができます。
印刷の文字が滲みにくい
トナーカートリッジのよいところは、印刷した文字が滲みにくいことも挙げられます。トナーカートリッジでの印刷では、顔料やワックスなどで作られたトナー粉を熱や圧力で溶かし、用紙へ圧着させて印字します。
トナーカートリッジは、インクカートリッジのように紙の表面にインクを吹きかけるのではなく、紙にインクを転写します。そのため、インクが滲まずに文字をはっきりと印刷できます。
普通紙の色が馴染みやすい
トナーカートリッジを使った印刷は、普通紙を使用することも可能です。印刷に使われる用紙は、加工紙と非加工紙の2種類に分けられます。非加工紙をさらに細かく分けたものの1つが普通紙です。コピー用紙などとも呼ばれる一般的な印刷用紙で、リーズナブルでどのような機種にも対応可能です。
トナーカートリッジは、用紙にインクを定着させる滲みにくい印刷方法をとります。そのため、加工が施されていない普通紙にも印刷できます。色がよく馴染み、読み取りやすい仕上がりが期待できます。
トナーカートリッジのデメリット
トナーカートリッジには、使用や保管の面でのデメリットもあります。よくある失敗に陥らないためにも、トナーカートリッジの注意点を確認しましょう。
写真印刷には向いていない
トナーカートリッジの大きなデメリットは、写真印刷には向かないことです。トナーカートリッジでの印刷は解像度が低くなるため、写真印刷をすると画質が荒くなってしまいます。
また、色の出方もはっきりとしているため、写真のような高精細できめ細かい表現が難しいです。このような理由からトナーカートリッジでは文書などを印刷するほうが向いており、写真印刷には向いていません。
インクカートリッジに比べて高単価
インクカートリッジに比べて、全体としてかかるコストが高いこともトナーカートリッジのデメリットのひとつです。トナーカートリッジは適合機種の導入代や、カートリッジ本体の価格がインクカートリッジに比べて高額です。
また、トナーやドラムや感光体、トナーボックス、定着ユニットや現像ユニットなど消耗品の種類も多いため、その維持費やメンテナンス代もかかります。消費電力もより多くかかるため、トナーカートリッジは総じて費用がかさみます。
気温、湿度の影響で劣化しやすい
トナーカートリッジの使用の際は、気温や湿気などの気候にも注意しましょう。湿気の多い部屋にトナーカートリッジを置いておくと、結露によりトナー粉が固まって使えなくなる恐れがあります。
また、開封したトナーカートリッジの使い方にも気をつけましょう。プリンターにはトナーの粉をかき混ぜる機能がありますが、半年などの長い間使っていないと周囲の湿気を吸って粉が固まってしまいます。トナーの粉が固まると印刷物の色が薄くなり、カラーコピーの色がおかしくなります。トナーカートリッジはエアコンで除湿管理できる部屋に置き、使用の際はプリンターに湿気がたまっていないかを確認しましょう。
トナーカートリッジの寿命
トナーカートリッジの寿命は、未開封のものだと約1年から2年半、開封済みのものだと約1年とされています。詳しい使用期限はメーカーや型番ごとに異なるため、トナーカートリッジの外箱にあるシールやロットナンバーを確認してみましょう。
また、トナーカートリッジの寿命は使用期限だけではなく、保管状況も影響します。直射日光の当たる場所や高温多湿な場所は避けて保管すると、寿命が長持ちします。
トナーカートリッジの捨て方
トナーカートリッジを捨てるときは、メーカー回収を依頼したり、家電量販店の回収ボックスに出したりする方法があります。汎用品などで対応してもらえない場合は、産業廃棄物として処分することも可能です。処分したいトナーカートリッジが未使用品なら、買取に出すのもおすすめです。人気メーカーの製品なら、高値での買取が期待できます。
まとめ
トナーカートリッジとはプリンターで使われるインクのうち、パウダータイプのものです。高速印刷や大量印刷に向いていて、色も滲みにくく普通紙でも綺麗に出力できることが特徴です。インクカートリッジとの違いは、インクの形状や使用できるプリンターの種類にあります。また、丁寧で高精細な仕上がりが特徴であるため、印刷速度や得意な印刷も異なります。今回紹介した内容をもとにトナーカートリッジの仕組みやメリットを理解して、より効率的な使用に役立ててください。